この記事では上記の疑問の答えに加えて、キャットフードのパッケージに書かれている成分の見方や、各栄養素が体内でどういう働きがあるのかを、詳しく説明しました。
猫さんの健康維持のためには、キャットフードのパッケージに書かれている成分の見方や、各栄養素が体内でどんな働きをするのかを知ることはとても大切です。
この記事で、あなたの大切な猫さんの、ごはんを探すお手伝いができれば幸いです。
キャットフードのパッケージに書かれている5つの成分について
キャットフードのパッケージに書かれている成分は、ペットフード公正取引協議会により、下記の5つの成分が記載されるよう定められています。
成分は、たんぱく質、脂質、粗繊維、灰分、水分について、保証し得る値を重量百分比(%)で記載します。たんぱく質・脂質は「以上」をつけて、粗繊維・灰分・水分は「以下」をつけて以下のように表示します。
*「粗繊維」については、「粗」を外してしまうと意味が違ってしまうので、書き換えることはできません。
成分 表示方法 成分の表記方法 たんぱく質 %以上 粗たんぱく質 でも可 脂質 %以上 粗脂肪 でも可 粗繊維 %以下 灰分 %以下 粗灰分 でも可 水分 %以下 07.成分(保証分析値)について|表示の基礎知識|ペットフード公正取引協議会
https://pffta.org/basic/07.html
「粗繊維」の「粗」を外してしまうと意味が違う理由についてはここをクリック
キャットフードの成分に炭水化物がなぜ書かれていないのか
炭水化物の表示がないのは上記で記載した通り、『ペットフードの表示に関する公正競争規約』の成分表示方法に、炭水化物の表示がないからです。
これはAAFCOが推奨する基準に、炭水化物がないためだと考えられます。
なおAAFCOの基準に炭水化物がない理由については不明です。
炭水化物の含有量の計算方法
炭水化物の含有量は表示されていないことがほとんどですが、保証成分からおおよその含有量は計算できます。
炭水化物含有量の計算方法
炭水化物% = 100 -(水分% + たんぱく質% + 脂質% )
キャットフードの保証成分に書かれている「粗」の意味
「粗」はいい加減な数値という意味ではなく、栄養成分分析上の実数の内容を示したもので、それぞれの純粋な成分以外の物も含まれた数値であることを示しています。
またおおよそ、その栄養成分としてもよいという意味なので、粗たんぱく質=たんぱく質として考えて問題ありません。
ただし、粗繊維については「粗」を外してしまうと意味が違うため、粗繊維と必ず記載しなければいけません。
「粗繊維」の「粗」を外してしまうと意味が違う理由
粗繊維はキャットフードまたは、キャットフードを希硫酸および希アルカリ溶液で順次煮沸し、エタノールおよびジエチルエーテルで洗浄した残りの有機物のことで、主に不溶性食物繊維であるセルロース、リグニン、ヘミセルロースなどのことをいいます。
なお測定時の不溶性食物繊維(セルロース、リグニン、ヘミセルロース)も半分以上が分解されるといわれているため、測定値と実際の含有量に大きな誤差が生じているそうです。
また、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がありますが、粗繊維の測定では水溶性食物繊維は測定できません。
上記のことから繊維は、「粗繊維」と記載が義務付けられています。
成分表の△%以上や△%以下の意味
キャットフードの成分表に%表示するのは、栄養バランスを重視しているからです。
「以上」や「以下」で示しているのは、栄養成分を保証しているという意味です。
成分 | 表示方法 | 意味 |
---|---|---|
粗たんぱく質 | △%以上 | 最低でも△%以上は入っています |
粗脂肪 |
成分 | 表示方法 | 意味 |
---|---|---|
粗繊維 | △%以下 | 最大でも△%以下は入っています |
粗灰分 | ||
水分 |
保証分析値と乾物量分析値の違いについて
キャットフードのパッケージの成分は、ほとんど保証分析値で書かれていますが、AAFCOなどが示している成分は、乾物量分析値で示されています。
それは下記の理由からです。
成分表示に保証分析値と乾物量分析値の2種類があるのはなぜか
まずは分かりやすく、下記の例で保証分析値を乾物量分析値に変換してみます。
保証 分析値 | ドライ フード | ウェット フード |
---|---|---|
たんぱく質 | 45% 以上 | 10% 以上 |
水分 | 10% | 80% |
乾物量分析値の計算方法
乾物量分析値=フードの保証分析値たんぱく質量 ÷(100 ーフードの保証分析値水分量)× 100
ドライフードの乾物量分析値(たんぱく質)
45 ÷(100ー10)× 100=50
ウェットフードの乾物量分析値(たんぱく質)
10 ÷(100ー80)× 100=50
保証分析値ではドライフードとウェットフードのたんぱく質の含有量は、いっけん異なって見えましたが、乾物量分析値だと同じ含有量なのが分かります。
このことをふまえると、乾物量分析値はフードの比較がしやすい分析値ということです。
AAFCOはフードに含まれる栄養素の基準値を示しているため、乾物量分析値で示しており、キャットフードのパッケージに記されている栄養成分値は、このキャットフードに含まれている栄養成分値を示しているため、保証分析値での記載となります。
そのため他のキャットフードの成分値を比較する際は、乾物量分析値に変換して比較しましょう。
栄養素の働きを詳しく解説
猫さんの健康維持のためには、各栄養素が体内でどんな働きをするのかを知ることが大切です。
そのため各栄養素の働きを解説していきます。
また、栄養素は多くても少なくても意味がありません。
栄養素は少ない量に合わせられるため、多く摂ったとしても体内に貯蔵されるか、または体外に排出されてしまいます。
栄養素を摂るうえで、バランスよく摂ることが大切です。
栄養素 | 働き | ||
6大栄養素 | 3大栄養素 | 炭水化物 | エネルギー源(1gあたり4㎉)、腸管の健康 |
たんぱく質 | エネルギー源(1gあたり4㎉)、身体をつくる | ||
脂肪 | エネルギー源(1gあたり9㎉)、生理機能の維持 | ||
ビタミン | 生理機能の調節、補酵素 | ||
ミネラル | 生理機能の調節、身体の構成成分、酵素の活性化 | ||
水 | 生命の維持 |
たんぱく質の働き
たんぱく質はアミノ酸が結合した集合体で、動物性食品に含まれているたんぱく質を、動物性たんぱく質といい、植物性食品に含まれているたんぱく質を、植物性たんぱく質といいます。
アミノ酸は20種類あり、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類される。
アミノ酸とは体内で合成できないか、合成が不十分なため、必ず食品から摂取する必要があるアミノ酸のことです。
たんぱく質の質(良質なたんぱく質)とは
たんぱく質の質は、消化吸収や体内での利用率により決まります。
たんぱく質の質をはかる指標に「アミノ酸スコア」や「生物価」があります。

たんぱく質の体内での働き
筋肉、骨、皮膚、血液、酵素、免疫抗体、ホルモンなど、生命活動に必要なあらゆるものの構成成分であり、猫の場合はエネルギー源にもなる。
たんぱく質は1gあたり、4㎉になる。
原因 | 影響 |
---|---|
たんぱく質の過剰 | 肥満、腎臓疾患、肝臓疾患 など |
たんぱく質の不足 | 成長不良、食欲不振、貧血、被毛の劣化、体重減少、免疫力の低下 など |
脂質の働き
資質は生体内では、中性脂肪、リン脂肪、糖資質、コレステロールなどとして存在し、構造の違いから単純脂肪、複合脂肪、誘導脂肪に分類される。
脂質は1gで9㎉のエネルギー源となる。
分類 | 主な名称 | 存在場所 | 主な働き |
---|---|---|---|
単純脂肪 | 中性脂肪 (トリグリセリド) | 脂肪組織、血漿 | エネルギー源 |
複合脂肪 | リン脂質、糖脂質 | 脳神経組織、 細胞膜、血漿 | 生体膜の構成 |
誘導脂質 | 脂肪酸、ステロイド | 脳神経組織、血漿、 ホルモン、胆汁酸 | 生理機能の維持(体温調節、 脂溶性ビタミンの運搬、 ホルモンや胆汁の合成 など) |

分類 | 脂肪酸名 | 生理機能 |
---|---|---|
オメガ6 | オメガ6共通 | 血流の改善、皮膚と被毛の健康に働く |
アラキドン酸 | 炎症促進作用があるため、過剰摂取はアレルギーの原因になることがある。 | |
オメガ3 | オメガ3共通 | 血流の改善に役立つ |
EPA (エイコサペンタエン酸) | 炎症抑制、血液の健康維持、皮膚・被毛の健康維持、免疫機能の調整 | |
DHA (ドコサヘキサエン酸) | 脳機能の維持・向上、視力維持、抗炎症作用、血液の健康維持 |
炭水化物の働き
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」の2種類から、構成されています。
なお食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」2種類がある。
糖質について
糖質は単糖類を基本分子とし、この単糖類の結合数によって体内での働きが変わっていきます。

多糖類
でんぷんとグリコーゲンは消化ができる多糖類。
でんぷん:植物の貯蔵エネルギー源。
グリコーゲン:動物の貯蔵エネルギー源。
動物は植物からでんぷんを摂取し、体内で消化しエネルギーとして活用する。
余剰となった場合は、グリコーゲンに合成して、肝臓や筋肉に貯蔵する。
さらに余剰となったグルコースは脂肪になり、脂肪組織に貯蔵される。
肝臓グリコーゲンは血糖値が低下すると、グルコースに分解されて血糖値のコントロールをする。
筋肉グリコーゲンは、筋肉のエネルギー源として、再びグルコースに分解されて利用される。
脂肪組織に貯蔵されたグルコースは、分解されにくいため糖の過剰摂取は肥満の原因となるため注意が必要。
糖の代謝について
穀物は生のままでは体内での消化吸収は難しいが、穀物に水と熱を加えることで、体内でも消化吸収できるようになり、これを糊化(こか)またはα化といいます。
このα化した穀物だと猫でも、消化吸収は可能となる。
猫は肉食動物のため、炭水化物の消化吸収は他の動物と比べると苦手ですが、まったく消化吸収ができないわけではありません。
猫は小腸に存在する、でんぷんの消化酵素(マルターゼ)が犬よりも活性が高く、猫の母乳には約20%(乾物中)の乳糖が存在しています。
このことから、猫も40%(乾物あたり)くらいのでんぷんや糖は、消化吸収できるとされています。
食物繊維の働き
人や猫は食物繊維を分解する消化酵素が体内にないため、食物繊維は消化できない多糖類です。
食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」があります。
灰分(ミネラル)の働き
キャットフードの成分に灰分とありますが、これはミネラルのことをいいます。
ミネラルには、微量で生体の構成や生体機能の調整などをになっています。
また、ミネラルは体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要がある。
体内に存在する量が多いミネラルを「多量ミネラル」といい、体内に微量に存在するミネラルを「微量ミネラル」という。
ミネラルの役割
多量ミネラル
ミネラル名 | 主な働き | 欠乏症 | 過剰症 | 含まれる食品 |
---|---|---|---|---|
カルシウム | 骨・歯の形成、筋肉の収縮、血液凝固 | 骨粗鬆症、栄養性二次性上皮小体機能亢進症、筋肉の痙攣、てんかん | 骨の発達異常、その他ミネラルの不足 | 乳製品、小魚、大豆 |
リン | 骨・歯の形成、核酸・細胞膜・神経伝達物質の材料 | 骨粗鬆症、栄養性二次性上皮小体機能亢進症、筋肉の痙攣、てんかん | カルシウム不足 | 肉、魚、乳製品 |
マグネシウム | 骨・歯の形成、酵素の活性化、細胞の興奮を鎮める※ | 食事性の不足はまれ | 尿路結石(ストルバイト)、弛緩性麻痺 | 大豆、穀類 |
カリウム | 浸透圧の維持、細胞の興奮※ | 食欲不振、元気消失 | 食事性の過剰はまれ | 果実類、芋類、豆類、肉類、魚類 |
ナトリウム と塩素 | 浸透圧の維持、細胞の興奮※ | のどの渇き、便秘 | 食欲不振、疲労 | 食塩、みそ |
微量ミネラル
ミネラル名 | 主な働き | 欠乏症 | 過剰症 | 含まれる食品 |
---|---|---|---|---|
鉄 | 酵素の運搬、ヘモグロビンの構成成分 | 貧血、成長抑制 | 食事性の過剰はまれ | レバー |
亜鉛 | 酵素の構成成分 | 脱毛、被毛の脱色、成長遅延、繁殖障害 | カルシウム、銅の不足 | 魚介類、レバー、赤身肉、種子類 |
銅 | 酵素の構成成分 | 食欲不振、元気消失 | 肝炎 | レバー |
マンガン | 酵素の構成成分 | 食事性の不足はまれ | 食事性の過剰はまれ | 穀類、豆類、魚類 |
セレン | 抗酸化作用、酵素の構成成分 | 食事性の不足はまれ | 食事性の過剰はまれ | 魚介類、牛肉、穀類 |
ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの構成成分 | 食事性の不足はまれ | 食事性の過剰はまれ | 昆布、ひじき、魚、牛肉、レバー |
ミネラルの相互作用
ミネラルは摂取量やバランスで、それぞれの吸収や代謝機能に影響をあたえるため、他のミネラルとの相性やバランスに注意する必要がある。
吸収を促進する成分 | 吸収が促進されるミネラル |
---|---|
動物性たんぱく質 | カルシウム、鉄、亜鉛 |
ラクトース(乳糖) | カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム |
ビタミンD | カルシウム |
ビタミンC、クエン酸 | カルシウム、鉄、亜鉛 |
吸収を阻害する成分 | 吸収が阻害されるミネラル |
---|---|
フィチン酸(豆類、穀類) | カルシウム、鉄、亜鉛 |
シュウ酸(ホウレンソウ、ブロッコリー、さつまいも) | カルシウム、リン |
不溶性食物繊維 | カルシウム、マグネシウム、鉄 |
タンニン | 鉄、亜鉛 |
ビタミンの働き
ビタミンとは体内の代謝反応や、生理機能を正常に進行させるために、必要な微量の栄養素です。
体内で合成できるビタミンもありますが、合成量が体内で働くには不十分な場合もあるため、食事での摂取が必要。
ビタミンには、「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」の2種類が存在する。
ビタミン名 (化学名) | 主な機能 | 欠乏症 | 過剰症 | 含まれている食品 |
---|---|---|---|---|
ビタミンA (レチノール) | 視覚・皮膚・粘膜の健康維持、骨の発達 | 食欲不振、体重減少、皮膚や粘膜の異常 | 食欲不振、成長遅延、骨格異常 | 肝油、卵黄、レバー |
ビタミンD (カルシフェロール) | 骨の成長・維持 | 骨軟化症、骨粗鬆症 | 高カルシウム血症、軟部組織の石灰化、食欲不振 | 魚類、干しシイタケ、卵黄 |
ビタミンE (トコフェロール) | 抗酸化作用、細胞膜の成分 | 脂肪織炎、皮膚炎、免疫力低下 | ほとんどなし | 植物油、小麦胚芽、魚類 |
ビタミンK (フィロキノン、 メナキノン) | 血液凝固 | 血液凝固時間の遅延 | ほとんどなし | 緑黄色野菜、レバー |
ビタミン名 (化学名) | 主な機能 | 欠乏症 | 過剰症 | 含まれている食品 |
---|---|---|---|---|
ビタミンB1 (チアミン) | 補酵素、糖質の代謝、神経機能の維持 | 食欲不振、体重減少 | 毒性なし | 豚肉、大豆 |
ビタミンB2 (リボフラビン) | 補酵素、脂質の代謝、皮膚・角膜の保護 | 食欲不振、体重減少、筋力低下、皮膚炎、白内障 | 毒性なし | レバー、乳製品 |
ビタミンB6 (ピリドキシン) | 補酵素、たんぱく質の代謝、赤血球の生産 | けいれん、筋力低下、貧血 | 報告なし | レバー、肉類、卵、いわし |
ビタミンB12 (コバラミン) | 補酵素、核酸・たんぱく質・脂質の代謝、赤血球の生産、神経機能の維持 | 貧血、神経障害 | 毒性なし | 肉類、乳製品、酵母 |
ナイアシン | 補酵素、糖質、脂質の代謝 | 食欲不振、下痢 | 毒性なし | 肉類、魚類、豆類、卵 |
パントテン酸 | 補酵素、糖質・脂質、たんぱく質の代謝 | 食欲不振、成長不良、体重減少 | 毒性なし | レバー、乳製品、豆類、卵 |
葉酸(プテロイルモノグルタミン酸) | 補酵素、赤血球の生産、DNA・アミノ酸の合成 | 貧血、白血球減少症 | 毒性なし | レバー、緑黄色野菜 |
ビオチン | 補酵素、糖質・脂質、たんぱく質の代謝 | 皮膚炎、脱毛、食欲不振 | 毒性なし | レバー、乳製品、豆類、卵 |
コリン | 細胞膜の成分、脂質の代謝、神経機能の維持 | 神経障害、脂肪肝、成長遅延 | 下痢 | レバー、卵黄、乳製品、豆類 |
ビタミンC(アスコルビン酸) | 抗酸化作用、結合組織の強化 | 体内合成可能なため生じにくい | 毒性なし | かんきつ類、いも類、野菜類 |
水分の働き
水は体を構成する成分の中では最も多く、脂肪を除いた体重の約70%を占めます。
水の役割は多岐にわたり、たった10%の脱水でも死にいたる場合がある。
水の役割
1日の水の必要量は、体重1㎏あたり、約50㎖が必要とされています。
猫は必要な水分量の70%程度を確保すると、のどの渇きを覚えにくいとされており、自発的な水分量だけでは十分な必要量が確保されていないため、水を飲んでもらう工夫が必要です。
水分量を増やす際の注意点
一度に大量の水を飲ませてしまうと、排尿量や排尿回数が増えてしまい、逆に水分不足になることがあり、それだけではなく、水中毒を発症する場合もあるため注意が必要です。
水分量を増やす場合は、少量を何回にも分けて飲んでもらえるようにしましょう。

お読みいただき、ありがとうございました。
このブログがお役に立てば幸いです。
覚えておきたい基礎知識